2018/9/11

ニュース

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • noteで書く

庄司紗矢香のインタビュー[サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団]

今年11月にテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィルの日本ツアーで共演する、ヴァイオリニストの庄司紗矢香のインタビュー、ご覧ください。ユーリ・テミルカーノフ氏とのはじめての出会いと、共演のきっかけを教えてください。
テミルカーノフ氏とは、2001年以来毎年共演しています。パガニーニ国際コンクール後、オーディションを兼ねた演奏会で初めてお会いし、翌年、チャイコフスキーのコンチェルトで10公演の日本ツアーを行いました。17歳のときです。オーディション後、どうだったかな、と思っていたら、マエストロは両手を広げて近寄ってくださり、「素晴らしい演奏だったよ。これから君を世界中に連れて行くけど、良いかい?」と仰いました。
マエストロは、沢山はお話しない方でしたが、毎回終演後に演奏についてお聴きするうちに、だんだんとお話くださるようになりました。その後「ブラームスのコンチェルトは出来る?」と聞かれ、3週間後にロンドンのバービカン・ホールで代役を務めました。
以来、サンクト・フィルと共演しながら、共に歳を重ねて行っているように感じます。

マエストロはどんなお話をされましたか?特に印象に残っていることは何ですか?
マエストロが子どもの頃に、プロコフィエフが家にいらしたことや、プーシキンの詩、ロシアの歴史や芸術家についてお話くださいました。マエストロは、「ドストエフスキーを読みなさい」と仰いました。はじめに「地下室の手記」を手に取ったらとてもハマってしまい、それからほぼすべての作品を読みました。
マエストロは、個人的に親しい方々との集まりのときに、プーシキンの詩を朗読して皆に聴かせてくださることがあります。また、ご自身の故郷(チェルケスク)を大切に想われている様です。貴族的なメンタリティで、女性を大切にされる文化だそうです。私もサンクトペテルブルグで、美しい民族衣装をまとったチェルケスク民族舞踊を見せて頂いたことがあります。

温かいお人柄ですね。マエストロの音楽については、いかが思われますか?
マエストロは、指揮台の上にいながらお客様を包み込むような方ですね。いつも音楽にドラマがありTheatrical(劇的)、全てのフレーズがrecitativo(話しかけるよう)だと思います。模範としてきた灯台のともし火のような存在であり、また私が言うのは恐れ多い様な気がしますが、探しているもの、目指すものが一緒のような気がします。

今回の日本ツアーで、Mo.テミルカーノフ&サンクト・フィルとはシベリウスの協奏曲を演奏されます。
シベリウスは頻繁にペテルブルクに来ていたそうですが、フィンランドには独特の空気感があり、北欧諸国のノルウェーやスウェーデンとも違う、またヨーロッパの伝統芸術とは異なる民族的な音楽があると思います。フィンランドの言葉のリズムやイントネーションが曲に現れている様に感じます。第3楽章は重量感のある付点がたくさんあり、曲全体においてオーケストラとの掛け合いが楽しめます。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲には、どのようなイメージを描いていらっしゃいますか?
第1楽章の始めはシベリウス本人が述べたように、澄み切った空気のなかに、一羽の鳥がすぅっと通過しているような北国の空気感があります。また、とてつもない深淵を覗き込む暗さとか、気の遠くなるような深さ・・・。シベリウスの音楽には厳しい自然との繋がりを強く感じます。ロシア人とは違うけれど共通すると思う部分は、表面は冷たいけれど内側はとても熱く、狂気をも抱えた、まるでマグマのような熱い内面をもっているところだと思います。でも、これらはあくまでも私が描くイメージなので、聴衆の皆様には自由に聴いて頂きたいです。

この先、挑戦してみたい作品は何ですか?
まだ弾いていない曲がたくさんあります。一生のうちに勉強したい曲目リストには終わりが無いですね。でも、リストはいつも心に秘めています。

庄司さんは、以前、絵も描かれていましたね。演奏活動以外で好きなことがありましたら教えてくださいますか?   
ヴィデオ・アートを創作することが好きです。コンセプトは絵と同じく、音楽が響く時、すでに空気中に存在するものを、実際目に見える映像にしていくプロセスです。10代の時からの夢で、これが2005年にドイツからパリに移った主な目的です。引っ越して真っ先に、感覚を理解し技術面を手伝ってくれるヴィデオ・アーティストを探し始めた中、あるときギャラリーで心惹かれる作品を見つけて、作者に連絡し、その方を編集者として私が雇う形で、2007年以来、3つの作品を製作しました。2003年に録音したショスタコーヴィチのプレリュードが作品のひとつです。最初の作品’Synesthesia 2008’は、2014年のリヨンのビエンナーレと、ブローニュの画廊で取り上げていただきました。2009年に行った東京の個展でも、その作品を展示しました。なかなか纏まった時間を作るのは難しいですが、その後は自分一人でコツコツと続けています。

有難うございました。テミルカーノフ氏80歳を記念する日本ツアーでのシベリウスのヴァイオリン協奏曲を、心待ちにしています。

聴き手:ジャパン・アーツ

– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
テミルカーノフ80歳記念公演 ロシア最高峰の巨匠とオーケストラで聴く 薫り高き響き
ユーリ・テミルカーノフ指揮 サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団
2018年11月12日(月) 19:00開演 サントリーホール
2018年11月13日(火) 19:00開演 サントリーホール
公演詳細はこちらから

ページ上部へ