2016/10/6

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レイフ・オヴェ・アンスネス公演批評が掲載されました[9月19日ロンドン バービカンホール]

11月に来日するレイフ・オヴェ・アンスネス。9月19日にロンドンのバービカンホールでのリサイタルの公演批評が掲載されました。日本ツアーでも演奏するプログラムの公演批評、是非ご覧ください。

Seen and Heard international  ロバート・ビーティー  2016年9月21日付

 レイフ・オヴェ・アンスネスはおそらくどんな曲でも演奏できるのではないかと思われる、まれなピアニストの一人である。何年も前にBBCプロムナード・コンサートで、アンスネスによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の見事な演奏を聴いたときから、私は彼をロマン派の演奏に秀でたピアニストだと考えてきた。そしてその後に聴いた彼のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、グリーク、シューマン、バルトーク、プロコフィエフも傑出していた。手短に言うと、アンスネスが注意を向けたものはなんでも黄金に変わるのであり、このコンサートも例外になるはずがなかった。
 シベリウスのロ短調の即興曲は、ハープの演奏のようなきらびやかに輝く装飾音が音の滝となって流れていく曲で、すっかり魅了された。タッチのコントロールと、この複雑な伴奏部分に対するメロディ部分の響かせ方が見事だった。グリークとニールセンのピアノ曲を録音しているアンスネスは、明らかにスカンジナビアの作曲家によるレパートリーの表現スタイルを身につけているので、彼のこの分野の曲をもっと聴いてみたい。
 リサイタルの後半はドビュッシーの『版画』で始まった。「塔」ではジャワのガムラン音楽の世界が呼び起こされ、テクスチュアと響きのコントロールは見事で、音の重ね方はお手本のようだった。繊細で美しく段階的に調整された演奏で、音楽が自ら語りかけてくるように思えた。「グラナダの夕べ」では、うだるようなグラナダの暑さが強烈に思い起こされ、アンスネスが示した色彩の変化のいくつかは実に豪華だった。「雨の庭」ではすばやいトッカータの修飾音が機敏に演奏され、パッセージワーク(副次的な部分)は尋常でないほど明瞭にくっきりと浮かび上がった。彼がスタインウェイから引き出した燃え上がるような音色と、光と影のゲームが私は好きだ。
 リサイタルの終わりはショパンの有名な3作品だった。アンスネスはバラード第2番で全体を明快な語り口で演奏し、穏やかなオープニングから、乱気流にのみ込まれたようなプレスト・コン・フオーコの部分への雰囲気の変化にもうまく対応していた。ノクターン第4番ではベルカント風のメロディを磨きのかかった豊かな音色で、さらに装飾的な箇所の一部では奇抜な雰囲気を出して演奏した。バラード第4番の演奏は、この傑作をどう演奏するかを示すマスタークラスのようで、豊かな色彩、創意あふれるテクスチュア、各セクションが組織的かつ自然に浮かび上がってくる複雑な対位法でいっぱいの、壮麗な音楽の詩を思わせた。
 全体的に見て、これは世界最高峰のピアニストのひとりによる、すばらしいリサイタルだった。
 
2016年9月19日 ロンドン バービカンホール 
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番
シベリウス:即興曲
ドビュッシー:版画
ショパン:バラード第2番、夜想曲第1番、バラード第4番

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語り継がれる巨匠への道を、一途に向かう
レイフ・オヴェ・アンスネス ピアノ・リサイタル
2016年11月25日(金) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
公演詳細はこちらから

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