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アリス=紗良・オットに聞く [9月30日に向けて]

5月にトーン・キュンストラー管弦楽団との共演で各地を沸かせたアリス=紗良・オット。「報道ステーション」に生出演し演奏を披露するなど話題のアリスに、秋から始まる待望のリサイタル・ツアーに向けて話を聞きました。

Q:9月のリサイタルでは可愛らしいグリーグの抒情小曲集、(日本ではあまり演奏されることのない)バラード、そして大曲リストのロ短調ソナタが予定されています。まずこのプログラムの全体のコンセプトを教えていただけますでしょうか?

アリス=紗良・オット(以下、ASO):9月にリリースする新譜「Wonderland」にあわせて組んだプログラムです。前半はグリーグの『抒情小曲集』とバラードで構成しました。グリーグがイメージしていた不思議な世界=妖精の国を楽しんでいただければと思います。最初から休憩までは、皆さまを“夢の旅”“音楽の冒険”にお連れできたら、と思っています。
後半は“夢の世界”から一転、リストの『ソナタロ短調』です。がらりと雰囲気が変わり、地獄の底のような”死の世界”になります。リストのソナタは、15歳の頃から勉強し続けていたのですが、なかなかコンサートで弾く機会がありませんでした。とても深く、特徴的な曲なので、なかなかプログラミングできなかったのです。
今回グリーグのプログラムを考えていた時に、対比にもなるこの作品と組み合わせると、バランス的にも合う!とひらめきました。前半では気持ちよくファンタジーの世界に浸っていただき、その夢から覚めた頃に、ダークな、精神的にも複雑な世界に皆さまをお連れします。私にとっても、もしかしたらお客さまにとっても、チャレンジなプログラムなのかと思いますが、(オルフェウスのように)地獄に導いていきます!無事、地獄から抜け出せるといいのですが・・(笑)
人はどんな人でも、いくつかの性格、人格を持っているのではないでしょうか。明暗、2つの対称的なものを描き出すプログラムですから、ご自身の中での旅、心の旅をしていただけるかとも思います。一つのプログラムの中で、このようにギャップのあるもの弾くのは初めてです。私自身楽しみですし、お客さまにも楽しんでいただけたら嬉しいです。

Q:その中で、グリーグの抒情小曲集はレコーディング(9月にリリース予定)もされています。何か特別な思い入れはありますか?

ASO:(グリーグの)ピアノ協奏曲は、ずっと弾いている曲で、たくさんの思い出があります。この曲をレコーディングする時に、あまり演奏される機会がないバラードや、小さい作品が詰まった抒情小曲集がぴったり合うな、と思って選びました。グリーグは、協奏曲や『ペール・ギュント組曲』の“朝”などがよく知られていますが、知られていないけれども素敵な作品がたくさんあります。もっと多くの人にグリーグの素敵さを知っていただきたくて・・・。グリーグの曲は、シンプルで同じモチーフの繰り返しが多いです。聴いているうちに引き込まれていく、魅力的な曲です。シンプルだからこそ、聴いているうちに引き込まれていってその世界に入ってしまう・・・。気がつくと別の世界にいる感覚になる、不思議の国(CDタイトルの『Wonderland』)を冒険しているような感じになるのです。

Q:アリスさんと“リスト”というと、『ラ・カンパネラ』など超絶技巧の小品のイメージがあります。今回、このそれらリストの作品とは一線を画すロ短調ソナタに挑まれる経緯や、意気込みなどお聞かせいただけますでしょうか?

ASO:そうですね。ソナタはとてもチャレンジングな曲です。リストは、きらびやかな作品、超絶技巧を駆使するテクニック的に難しい曲などをたくさん作っています。その中でも、ソナタは究極的に難しい作品です。でも私にとって、超絶技巧というのは、単に早くパッセージを弾けたり、オクターブを早く弾けたり、というようなことではなく、それを使っていかに音楽を表現できるか、というところが大切だと思っています。テクニックは音を表現する道具であって、それをマスターして使いこなせる人こそが本当の超絶技巧の持ち主だと思うのです。リストの『ロ短調ソナタ』は共感する部分がとても多いのに、弾く機会がなかった作品。今回リサイタルで聴いていただけることが、とても嬉しいです。

Q:ヨーロッパ、日本、アジアだけではなくアメリカでもご活躍で、世界にその活動が広がってきましたね。年間にどのくらいのコンサートをなさっているのでしょうか?

ASO:5年前くらいから少しセーブするようになって、特に今年は2ヶ月のお休みをいただきます。真剣に数えたことはありませんが、年間60~70回くらいでしょうか。

Q:レパートリーも多彩ですが、どのようにプランして練習をなさっているのでしょうか?そのための時間を確保するために工夫していることはありますか?

ASO:いろいろな経験をしていく中で、演奏する曲については「No」を言うことも必要だとも思うようになりました。新しい曲を勉強するのにはきちんと時間をかけて準備をして臨みたいと思っています。来年はオフを長いタームで決めて集中して取り組むようにしています。私は、自分が今いるポジション(場所)に相応しい曲は何か、今取り組むべき作品は何かということも考えるようにしています。好きな曲、弾きたい曲は山のようにあるので、そのなかで今の自分に合う曲を考えるのです。新譜に収録したグリーグの協奏曲はどうしても弾きたかったものなので、私の意見を通してもらいました!

Q:そしていつも素敵なドレス(衣装)でステージに登場してくださいますが、どんな気持ちで選んでいますか?曲によって着たいと思う服は変わるのでしょうか?

ASO:以前はあまり意識していなかったのですが、最近は意識して考えるようになりました。ステージに出る瞬間から演奏(パフォーマンス)は始まっていますからね!ビジュアルも大切だと思うようになりました。曲との相性も大切ですよね。また照明(ライティング)も大事だということを改めて感じています。コンサートはライブですから、聴くだけではなく、観ていただく部分も楽しんでいただけるようにしたいです。

Q:オフの時(ピアノに触っていない時)は、何をなさっていますか?絵がお好きだったり、お料理が得意だったり・・・というお話は以前もうかがいましたが。。。最近、得意にしているお料理は何かありますか?

ASO:家でゴロゴロしています(笑)。お料理をしたり、部屋の模様替えもすごく好きなので、家具をしょっちゅう動かしていたり・・・。旅が多いので、だからこそ家にいる時間をすごく大事にしています。今年こそは、5年住んでいてもまだ行ったことがないベルリンの名所を観光したいです。美術館なども周りたいですね。

Q:今回の日本ツアーでは、大きなコンサートホールから少ない人数(京都のバロックザールのように200名)のホールなどがあります。それぞれのホールによって演奏の仕方は変わりますか?

ASO:もちろん、変わります。音響に一番相応しい音を創り出し、お届けするのが音楽家の使命であり、課題。音響は、ホールの大きさや、そこにあるピアノによって変わってきますから、それにもっとも相応しい音を出すことが必要です。同じ曲でも演奏する度に、空気感やそれに反応する自分自身も変わってきますから。ですから、お客さまには、1回の公演だけではなく、2回3回と足を運んで欲しいのです。その変化もおもしろいと思いますので・・・。サイン会などで、その違いをコメントしてくださる方もいらして嬉しいです。

Q:今、夢に描いていること(目標とかではなく、こんなことしてみたいなぁ・・・)ということがありましたら教えてください。

ASO:女性の作曲家に興味を持っていて、これは今後のプロジェクトにしていきたいと考えています。女性作曲家には、本当に素晴らしい人、興味深い人がたくさんいるので、その魅力をもっと知ってもらいたいです。

Q:東日本大震災の時も日本に思いを寄せてくださっていましたが、今回は地震で被害を受けた熊本からツアーがスタートします。特別なメッセージがありましたらいただけますか?


ASO:以前もコンサートで熊本へ伺ったことがありますが、ホテルとホール、空港の往復だったので・・・。
皆さま、苦労されていると思いますが、私の音楽を通して少しでも心にあたたかさや、ほっとした気持ち、励みを感じていただければ・・・と思っています。

Q:最後に、お客様へのメッセージをお願いいたします。

ASO:私と一緒にワンダーランド(Wonderland)、そして反対の暗い世界を冒険していただけたらと思います。いろいろなホールでいろいろな音色を聞いて、曲の解釈を感じていただけたら嬉しいです。そして、感じたことを教えていただけたら・・・。反応が返ってくるのことが、本当に嬉しいのです。
では皆さま、コンサート会場でお会いしましょう!

Q:ありがとうございました。

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颯爽と時代を翔るピアニズム
アリス=紗良・オット ピアノ・リサイタル

2016年9月30日(金) 19:00時開演 東京オペラシティ コンサートホール
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