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インタビュー:ケイト・リウ(第3位、マズルカ賞)

 細身の体ながらピアノから豊かな音を引き出し、音楽に入り込んで表現するショパンで卓越した能力を示したケイト・リウさん。第3位入賞、マズルカ賞受賞という快挙に、自身で驚きの表情を隠さない様子も印象的でした。ダン・タイ・ソン門下で入賞を果たした3名のうちの一人で、現在カーティス音楽院でロバート・マクドナルド教授のもと学んでいます。


─第3位入賞、おめでとうございます。ショパンコンクールという場でワルシャワ・フィルハーモニーホールのステージに立ち、ポーランドの聴衆に向けて演奏するということはどんな経験でしたか?
 たくさんのすばらしいアーティストが立ったあのステージで演奏することは、生涯で一度の経験だと感じていました。長らくつぎ込んできたエネルギーと努力の成果が、このコンクールの瞬間にうまく集約されて、夢が実現したという気持ちです。終わってしまうことが信じられません。
 練習は音楽が好きでしていることですから大変ではありませんが、それでも、カメラに囲まれたプレッシャーの中、審査員が見ているステージで演奏するのはやはり大変でした。


─コンクールに向けての準備で、音楽的、技術的、精神的な意味で心掛けてきたことはありますか?
 音楽的には、とにかく自分の音楽をすること、作品の背景などの理解を深めていくことを大切にしました。技術面は、ショパンの作品は技術が問題となる音楽ではないから、あまり気にすることはありませんでしたね。とにかく、自分の音楽性を表現できるよう、その部分を育てることを大切にしました。



─スリムな体なのに、とても重い音を鳴らすので、本当に驚きました。特に今回、同じピアノで大柄の男性が弾いたあとにケイトさんが出てきて、同じようなボリュームの音が出るのですごいなと。何か特別なテクニックがあるのですか?
 そうでしたか? ありがとう(笑)!特別なテクニックというのはないのですが、子供の頃から勉強してきた成果だと思います。昔は豊かな音がうまく出せなくて、一生懸命、研究しました。軽やかで叙情的な作品を好むようになってからは大きな音を出す必要はなくなったけれど、もちろんそうして培ってきたものが残っている部分があるのかもしれません。


─ショパンに共感しますか?
 はい、そうですね。例え彼と全く同じ経験をしていなくても、自分自身の人生のいろいろな経験から、似た感情が生まれることはたくさんあると思います。それを重ねあわせることで、作品とつながってゆくと思います。ときにはその共感から感傷的な気持ちになることもありますが……。彼の経験は、彼の音楽を通じて理解することができるように思います。


インタビュー・文:高坂はる香


*ガラ・コンサート会場で販売されるプログラム冊子には、インタビューの別バージョンが掲載されます。ぜひご覧ください。


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後日公開された採点表を見ると、ケイト・リウさんはポーランドの審査員勢から高い評価を受けていることがわかります。その一人、ピオトル・パレチニ審査員も、後日のインタビューで彼女を絶賛。そのコメントをご紹介しましょう。

ピオトル・パレチニ審査員(ポーランド)
「私は、ショパンの感情を見事に表現したケイト・リウの演奏を高く評価していました。エチュードやスケルツォの演奏を聴けば、技術があることは充分にわかりましたが、彼女はむしろ全ての演奏において、テクニックをセーブしていたと思います。
ショパンの音楽はポエティックであるべきで、ヴィルトゥオジティは求められません。ケイト・リウはショパンの音楽の中でヴィルトゥオジティを見せようとは絶対にせず、純粋なるショパンを演奏しました。
そして、彼女はピアノを演奏しているのではなく、単に、彼女の思い描く特別な世界やビジョンを表現するためにピアノを使っているだけだと感じました。ピアノを弾くという行為にとらわれていないのです。ピアノの技術という概念自体が、彼女にとって無意味なのでしょう。私にとって、彼女は“100%ショピニスト”でした」
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2016年1月に開催する【ショパン国際ピアノ・コンクール 入賞者ガラ】公演では、入賞者たちがカスプシック指揮ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団と来日し、若い入賞者たちの情熱をそのままお届けいたします。
2016年1月28日(木) 19時開演 東京芸術劇場 コンサートホール
2016年1月29日(金) 19時開演 東京芸術劇場 コンサートホール



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