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エサ=ペッカ・サロネン インタビューVol.1 (フィルハーモニア管弦楽団2013年公演)


Q:フィルハーモニア管弦楽団では多彩なプロジェクト、意欲的なシリーズでロンドンと世界中の聴衆の関心を“釘付け”にしてきたマエストロですが、オーケストラとの関係をどのように発展させきたのでしょうか。また将来目指すものを教えていただけますか?
A:ちょうど日本を訪れる2013年は、私がフィルハーモニア管を代役で指揮してから30年目にあたります。なんと30周年です(笑)!この間に複数の世代にわたる楽団員と音楽を作り上げてきました。私のフィルハーモニア管デビューを知っている団員も6、7名いるのと同時に、最近も極めて優秀な若手が入ってきています。
フィルハーモニア管は、非常に特別なオーケストラです。カラヤン、フルトヴェングラー、ムーティなど、歴史的な巨匠たちと培ってきた確固たる伝統をもっています。その一方で、彼らは新しいアイディアにとてもオープンです。楽曲に対して新しい考えを取り入れることを、スムーズに受け入れてくれます。
私が最も感嘆するのは、彼らが、伝統を保ちながらも発展し続けているという点です。これまで行ってきたことを保持するだけに留まらず、こうやったどうか、こんな風にできるのではないかと、常に新しい解決方法やチャレンジに挑む姿勢を持ち続けています。

その理由は、1945年フィルハーモニア管の創設にあるかと思います。当時、録音技術の発展の中でLPが発明されました。人々は、突然にして1時間以上の楽曲を一気に聞けることが可能になり、この録音技術に作品を残していくために当初結成されました。
私は最新技術がとても好きです。また、オーケストラ自身も、彼らの生い立ちということもあるのでしょうか、録音技術の進歩に柔軟です。ですから、(私がアーティスティック・アドバイザーに就任してからの5年間)すでにそういった現代の最新技術を使ったプロジェクトに積極的に取り組んでおり、またこれからも続けるつもりです。

現代社会において、オーケストラはどのようにこの膨大な情報の渦を切り抜けていくかということが勝負、だと私は思っています。人々はインターネット、携帯電話、iPodなどを常に携帯し接続しています。コンサートから遠のいている人々にアプローチしていくこと、それが私たちのチャレンジ(目標)です。
私たちは、現代社会におけるそのような状況を活用して、デジタル・メディアやソーシャル・メディアを活用することにより、聴衆を増やすことができるか、という実験を試みています。まだ始めたばかりですが、おかげさまですでに特筆すべき成果が出ています。
これが、フィルハーモニア管についての、私の最も短いコメントです(笑)。



Q:たいへん興味深く、またサロネンさんだからこそのアプローチだと思います。こういったハイテクを利用したプロジェクトを行うことによって、若い聴衆へのアプローチが広がりますよね?
A:はい。例えば今年(2012年5月から7月にかけて)大英科学博物館とタイアップして、“ユニバース・オブ・サウンズ:ザ・プラネット Universe of Sound: The Planets”という企画を行いました。
(フィルハーモニア管も、7月8日にThe Planets Live という公演を行っています。また、映像などは大英科学博物館の下記websiteでご覧いただけます。)
http://www.sciencemuseum.org.uk/visitmuseum/galleries/Universe_of_Sound.aspx
私たちがホルストの「惑星」を演奏する様子、リハーサルの様子などを最新デジタル映像で見せ、感じて、遊んでもらう・・・というものだったのですが、博物館では85,000人の来場が記録されました。
この来場者数はクラシック音楽としては凄い数字です。我々は自分たちのやっているクラシック音楽を信じて行っていける、音楽は現代においても強い力があるのだ、と確信することができるものです。
私は今、ロンドンで車を持っていません。ですから、地下鉄やバスを多く利用します。周囲を見回すと、人々は座った瞬間に携帯電話を取り出します。本を開き、ページを捲ったり、新聞を読んだりする代わりに小さいデジタル機器を見つめています。私は、この状況にどうやったら入り込んでいけるのかを常に考えています。彼らが見入っている携帯電話から目を離し、クラシック音楽に興味を持ってくれる方法はないだろうかと。
我々が現代社会で生き残るためには、世の中の人々が毎秒攻撃を受けている、膨大な情報という“騒音”を切り抜ける方法を見出すしかないと思うのです。

Q:マエストロご自身はそういった最新技術がお好きですか?
A:はい、もちろんです。私はテクノロジーにとても興味があります。ソーシャル・メディア・ネットワークを常に活用しようとしています。(サロネンはtwitterアカウント@esapekkasalonen で世界各地からつぶやいています。)
好きだからこそ、これまでクラシック音楽がこういったテクノロジーを使ってこなかったことをよく認識しているのです。フィルハーモニア管の素晴らしい点のひとつとしては、彼らはSNSにも柔軟だということです。このように社会に向けて開いている点でも、彼らは世界で最も優れた音楽団体のひとつであると言えるのではないでしょうか。

Q:確かにその通りですね。しかし、実際にクラシック音楽とハイテクを組み合わせてなにかを実現するというのは容易なことではないと思いますが。。。
A:そうですね。実現するためには、その世界に精通した人材が必要です。そしてそれらの人材は若い世代でなくてはなりません。なぜならば、私が話す言葉は、20代の若者が話しているものとは違いますから、彼らの言葉(方法)を使って伝えていかなくてはならないのです。またオーケストラは、未来への投資をしなければなりません。ここがフィルハーモニア管の伝統のひとつでもあります。彼らは、“未来”をとても大切に考えているのです。


インタビューはVol.2へ続く・・・


2012年10月3日 ボン・ベートーヴェン音楽祭
フィルハーモニア管弦楽団 ベートーヴェン全曲演奏会第1日 公演終了後楽屋にて。
取材:ジャパン・アーツ


≪サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 来日公演情報≫
2013年02月08日(金) 19時開演 サントリーホール


[曲目]
ベートーヴェン:劇付随音楽「シュテファン王」序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 〔ピアノ:レイフ・オヴェ・アンスネス〕
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マーラー:交響曲第1番「巨人」

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