アントニオ・ガデスと舞踊団の軌跡
アントニオ・ガデスは、スペイン市民戦争が始まった1936年に生まれた。一家は貧しかった上に父親は反フランコ軍の志願兵となったが捕らえられ、重傷を負った。11歳から働き、仕事で踊っていた時に著名なフラメンコ舞踊家ピラール・ロペスに才能を見出され、彼女の舞踊団の第一舞踊手となる。
その後、独立してしばらく経った1974年、彼は自ら舞踊団を結成、ロルカの戯曲に基づいた「血の婚礼」をローマで初演し、世界的な名声を得る。しかし翌年、反フランコ体制の活動家5人の死刑に抗議して踊ることを辞めて舞踊団を解散してしまった。フランコの死後踊りを再開。スペイン国立舞踊団設立のため芸術監督として招かれ、成功させたが3年間で辞任。以後、自身のアントニオ・ガデス舞踊団で孤高と言える仕事を続け、2004年に他界した。ガデスが残した作品は決して多くはないが、そのどれもがフラメンコを超えた珠玉の総合芸術として世界中から賞賛され、この21世紀においても不滅の金字塔として輝き続けるだろう。
ガデスの遺志により財団が設立され、主要な舞踊手、歌手、ギタリスト、スタッフはそのままに、200名を越えるオーディションによって残りの15名の若くて優秀なメンバーが選ばれ、2005年に舞踊団は再結成された。
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「カルメン」(メリメ作)
世界中で、そして日本で絶賛!ガデス不朽の名作
ガデスの舞台版「カルメン」は彼が主役を演じた映画「カルメン」(カルロス・サウラ監督/カンヌ映画祭最優秀芸術貢献賞)とは発想が異なっている。情熱的なジプシー女カルメンをめぐって竜騎兵隊の伍長ドン・ホセと闘牛士エスカミーリョとが繰り広げる物語は息をもつかせぬ迫力で一気にクライマックスへと登りつめる。光りと影とは巧みに扱われ、生のフラメンコ・ギターと歌、ビゼーのオペラ「カルメン」の音楽が、静寂と対比される。
この、普遍的で不滅のドラマは本質的なテーマに満ちているので、何度見ても新鮮である。フラメンコを超えて世界中の舞踊、演劇、映 画など様々な分野に衝撃を与え続けてきた。 |
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「血の婚礼」(ロルカ作)
ガデスの名を歴史に残した記念碑的作品
スペインの天才詩人・劇作家フェデリコ・ガルシア・ロルカはガデスが生まれた年に、若くしてファシストによって暗殺された。「血の婚礼」はロルカの3大悲劇の一つで、宿命的な愛と死がテーマである。カルロス・サウラ監督によって映画化され、以後サウラとの共同作業により「カルメン」、「恋は魔術師」へと続く。
妻も赤ん坊もある男レオナルドは、かつて愛した娘がどうしても忘れられない。その娘が花嫁になると知った男は婚礼の席から彼女を誘い出して一緒に逃げる。それを追ってくる新郎との決闘。ガデスは極限まで無駄を省き、解りやすく、また絵画のように美しい「能」のような世界を作り上げた。作品の完成までに10年以上を要している。
最後の見せ場、緊張の極みとも言える決闘のシーンはスローモーションで演じられる。音楽は「カルメン」にも増してスペイン色が濃厚で素晴らしい。 |
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「フラメンコ組曲」
フラメンコは観るべからず、ただ感ずべし。
フラメンコに浸ろうと思ったらストーリーは要らない。踊り、歌、ギターを、ただ心を開いて受け止めればよい。ここにはソレア、ファルーカ、サパテアード、セギリージャなど、フラメンコの代表的な形式が揃っている。しかも精鋭のガデス舞踊団で堪能できるのだから、贅沢である。「血の婚礼」との2本立てが日本に来るのは2回目、20年ぶりとなる。 |
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