あらすじ

「椿姫」の愛称を持つパリの高級娼婦ヴィオレッタは、自宅での夜会で紹介された純真な青年アルフレードに初めての真実の恋を覚え、郊外で幸せな生活を送る。しかし、ある日アルフレードの留守中に現れた彼の父ジェルモンに、娘の縁談に障ると懇願され、泣きながらそっとパリに去る。事情を知らないアルフレードは怒り、パリの友人宅の夜会で彼女をつかまえ満座の中で辱める。数ヶ月後、かねてから胸を病んでいたヴィオレッタは病床で死を待つだけの身になっていた。すべての真相を知ったアレフレードは許しを請うが、時すでに遅く彼女は息を引き取る。

 

「椿姫」
小林伸太郎 (音楽ジャーナリスト/在ニューヨーク)

ヴェルディ十八番目のオペラ ≪椿姫≫は、初演こそ失敗したが、今日ではイタリア・オペラの傑作として、もっとも人気の高いオペラの一つとなっている。その人気の秘密は数多いが、高級娼婦が若い純真な男と出会い、真実の愛に目覚めるものの、義父に仲を引き裂かれ、最後は肺病で死ぬという比較的シンプルなストーリー・ラインに加え、壮年のヴェルディが繰り広げるダイナミックで繊細な美しい旋律の数々、とりわけイタリア・オペラ最大の難役の一つに数えられるヒロイン、ヴィオレッタ役の魅力にあることは、誰もが認めるところだろう。

ヴィオレッタ役は、第一幕の有名なアリアとカバレッタ「ああ、そはかの人か…花から花へ」で華やかなアジリタと高音をこなす軽やかさが求められる一方で、二幕、三幕と進むと、よりドラマティックな表現が要求され、完璧に演唱するには数種のソプラノが必要といわれるほど、ソプラノにとっては美しくも過酷な役として知られる。常にその時代の代表的なプリマドンナが挑戦してきたが、今回のメト来日公演では、今をときめくルネ・フレミングがキャストされている。メトでは2003年に初めてヴィオレッタを歌った彼女、独自のヴィオレッタ像完成に向けて、日本でも渾身の演唱を繰り広げるに違いない。恋人役アルフレードにラモン・ヴァルガス、父ジェルモンにディミートリー・ホロストフスキーと、旬の人気歌手をそろえた充実の共演者もメトならではの魅力だ。
そして、演出・舞台美術はフランコ・ゼッフィレッリ。20世紀最高のヴィオレッタ歌いの一人、マリア・カラスとの経験をはじめ、「椿姫」の映画化も成功させるなど、ゼッフィレッリほど「椿姫」を知り尽くしている演出家はいないかもしれない。メトは 1998年に今回の上演版である新演出を送り出す際、1989年初演の前演出を手がけたゼッフィレッリに再び演出を任せるという、前代未聞の依頼を行った。劇場の信頼に応え、ゼッフィレッリはここでも細部にこだわった贅沢な舞台を見せてくれる。
ポピュラーで上演回数も多いが、意外に決定的な上演にめぐり合うことが難しいオペラ、「椿姫」。メトの豪華キャスト・プロダクションは、その期待に応えるべく最大限の力を発揮してくれるに違いなく、興味は尽きない。
主催:テレビ東京/朝日新聞社/ジャパン・アーツ
後援:アメリカ大使館

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