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近年は奇抜な解釈がトレンドだが、メトの「ドン・ジョヴァンニ」は、これまで見たどの舞台とも違って
“新鮮”だった。決して奇を衒ったりするわけではなく、衣裳も装置も一見するとオーソドックスにみえるのだが、あちこちに「わざ」が隠されていて、考え抜かれた、とてもしゃれた舞台だった。演出は、自身が女優でもあるマルト・ケラー。いかにも女流らしく、全体のコンセプトは“ドン・ジョヴァンニをめぐるラヴ・ストーリー”といった感じ。
彼をとりまく3人・アンナとエルヴィラとツェルリーナは、ドン・ジョヴァンニがまき散らす、強烈な魅力の虜になりながらも、現実を見据えるしたたかな女性たちだ。もしかしたら、ドン・ジョヴァンニは彼女らの妄想から生まれた幻想?とも思わせる、謎も秘めた舞台。登場人物たちは、みんな表情豊かで演技が細かく、まるで映画のシーンを見ているよう。そんな舞台なので、キャストはとても重要だ。今回主役を歌うアーウィン・シュロットは、ちょっとセクシーな若手バリトンで、いま欧米で注目株。ルネ・パーペのレポレロは、これが大ヒット。意外にコミカルな演技が巧く、軽快でかっこいい。そしてなにより、
“最高のドンナ・アンナ”と絶賛される、いまが旬のアンナ・ネトレプコと、これまた旬の美声メゾ、マグダレナ・コジェナーとの「美女対決」が実現する。そしてこの舞台、女性ならきっと「納得」していただける、すてきな“ケラー・マジック”が、いくつも用意されているのだ。 |