トリノ王立歌劇場 2010年来日公演


大成功!サンタフェ・オペラでのプレミエ・レポート

かつてないヴィオレッタとの出逢い
「もしかしたらこの《椿姫》が、これからの人生で、もう何も怖がらなくてもいいのだ、と思える助けになったかもしれません。」《椿姫》のヒロイン・ヴィオレッタを、昨年7月サンタフェで、そのキャリアで初めて歌ったあとのナタリー・デセイの言葉だ。そこからは、ソプラノ・レパートリーの最高峰とも言われる同役を歌うことの大変さと同時に、大役を演唱し切ったという彼女の充実感が伝わってくる。この時のデセイのヴィオレッタは、幕を追うごとに表現が深まり、それは感動的だった。
この成功を支えたのは、デセイが最も信頼するという演出家、ローラン・ペリとのコラボレーションだ。一人の娼婦の悲劇を誠実に語ろうという姿勢で貫かれたペリの演出の中、デセイは《椿姫》が彼女のために書かれたかのように、ヴィオレッタという女性を鮮やかに生きる。
一つの愛のために、悩み、苦しみながらも、全身全霊を捧げて駆け抜けるデセイのヴィオレッタ。オペラファンならずとも、必見の舞台と言えるだろう。
小林伸太郎(音楽ジャーナリスト、在N.Y.)

椿姫への期待
「これは観客の想像力に訴える、新鮮な舞台です。人間性に重点が置かれ、血が通っていて劇的です。
わたしは観客を未来の旅に誘いたいのです」とデセイはいう。
今年 8月、サンタフェ音楽祭で念願のヴィオレッタ・デビューを終えた直後の言葉だ。
ローラン・ペリの演出はデセイの個性に焦点を合わせたスピーディーでドラマチックな舞台。
シャンタル・トーマスのシンプルで幻想的な装置からは、華やかなドレスに身を包んだ孤独な女性の悲劇が浮かびあがる。
デセイは幕を追うごとに持てる実力をアップさせ、血の出るように鮮烈なヴィオレッタを演じ切った。
それは今まで誰も聴いたことのないほど、はかなく切ないヴィオレッタであり、いままで誰も見たことがないほど感動的な「椿姫」だった。
これは、オペラ・ファンもオペラ初体験の人も、必見の舞台です!
石戸谷結子(音楽ジャーナリスト)
椿姫 -La Traviata-
あらすじ・聴きどころ
第1幕:19世紀のパリ。青年アルフレードと出会った高級娼婦ヴィオレッタ(二重唱〈乾杯の唄〉)は、病に怯えつつも愛の喜びに震える(アリア〈ああ、そは彼の人か〜花から花へ〉)。
第2幕:郊外で暮らす恋人たち(アルフレードのアリア〈燃える心を〉。そこに青年の父ジェルモンが訪れ、「娘の縁談に差し支えるから息子と別れてくれ」と強要、ヴィオレッタは愛の巣を去る。ジェルモンは息子を諭す(アリア〈プロヴァンスの海と陸〉)が、裏切られたと思い込んだ彼は夜会の席でヴィオレッタを侮辱する。
第3幕:ヴィオレッタは死の床で手紙を読み返し涙にくれる(アリア〈さようなら、過ぎ去った日よ〉)。そこにアルフレードが舞い戻る(二重唱〈パリを離れて〉)が、彼女の命はやがて燃え尽きてしまう。
岸純信(オペラ研究家)